昔から願いごとをかなえてもらうため、三十三の観音霊場を巡る旅が盛んに行われている。三十三観音霊場は各地にあるが、関東地方では坂東三十三観音霊場が有名で現在も盛んに参られている。
坂東三十三観音霊場について
観音菩薩を祀る寺院においては観音信仰によって神社と同じように日常的な幸福や災害よけなどをお願いするため、多くの人々が参拝している。
願い事は観音菩薩が三十三の異なった姿に変身し、かなえてくださるとのことから、西国においては平安時代から三十三の観音霊場が定めら、すべての寺院を参拝する風習が生まれた。
鎌倉時代には鎌倉在住の武士などから関東においても三十三観音霊場が求められ、坂東三十三観音霊場が創設された。
その後、この風潮は各地に伝播し全国に100以上の三十三観音霊場が設けられている。この風習は浄土宗系の寺院が広まるのに対抗し、天台・真言宗系の寺院の自衛策の一環として、組織化された面もある。
以前ほどの人気はなくなったが、現在でも坂東三十三観音霊場を巡る人は多い。特に最近は御朱印集めの関係で霊場巡りとは関係なく単独で参拝する人も多い。三十三観音霊場巡りの納経印(御朱印)は特別の納経帳が用意され、書体も工夫されており、味のあるものが多い。
坂東三十三観音霊場は関東(神奈川、埼玉、東京、群馬、栃木、茨城、千葉)の各地に点在している。中でも鎌倉居住者が参拝しやすいように神奈川県に多い。また、昔から海上交通が発達していたこともあり、千葉にも多い。この関係で鎌倉の杉本寺が第一番(発願)、千葉の館山近くにある郡古寺が三十三番(結願)となっている。
観音霊場は本来徒歩で巡礼すべきものであるが、道のりが1200キロメートル程度に及ぶことから現実的ではなく、現在では交通機関を利用するのが一般的である。
昔の寺院は比叡山延暦寺のように山の上に作らことが多く、坂東三十三観音霊場もある程度登らなけてばならない寺院が多い。また、交通の不便な寺院も多い。最難関は茨城県の八溝山の山頂近くにある 日輪寺である。苦労して参拝すればごそれに比例して達成感があり、ご利益も多いということか。
坂東三十三観音霊場一覧
- 第 1 番 神奈川 大蔵山 杉山寺
- 第 2 番 神奈川 海雲山 岩殿寺
- 第 3 番 神奈川 祇園山 安養院
- 第 4 番 神奈川 海光山 長谷寺
- 第 5 番 神奈川 飯泉山 勝福寺
- 第 6 番 神奈川 飯上山 長谷寺(飯山観音)
- 第 7 番 神奈川 金目山 光明寺(金目観音)
- 第 8 番 神奈川 妙法山 星谷寺(星の谷観音)
- 第 9 番 埼 玉 都幾山 慈光寺
- 第10番 埼 玉 巌殿山 正法寺
- 第11番 埼 玉 岩殿山 安楽寺(吉見観音)
- 第12番 埼 玉 華林山 慈恩寺
- 第13番 東 京 金龍山 浅草寺(浅草観音)
- 第14番 神奈川 瑞応山 弘明寺
- 第15番 群 馬 白岩山 長谷寺(白岩観音)
- 第16番 群 馬 五徳山 水沢寺(水沢観音)
- 第17番 栃 木 出流山 満願寺(出流観音)
- 第18番 栃 木 日光山 中禅寺(立木観音)
- 第19番 栃 木 天開山 大谷寺(大谷観音)
- 第20番 栃 木 獨鈷山 西明寺(益子観音)
- 第21番 茨 木 八溝山 日輪寺(八溝山)
- 第22番 茨 木 妙福山 佐竹寺(北向観音)
- 第23番 茨 木 佐白山 正福寺(佐白観音)
- 第24番 茨 木 雨引山 楽法寺(雨引観音)
- 第25番 茨 木 筑波山 大御堂
- 第26番 茨 木 南明山 清瀧寺
- 第27番 千 葉 飯沼山 円福寺(飯沼観音)
- 第28番 千 葉 滑河山 龍正院(滑河観音)
- 第29番 千 葉 海上山 千葉寺
- 第30番 千 葉 平野山 高蔵寺(高倉観音)
- 第31番 千 葉 大悲山 笠森寺(笠森観音)
- 第32番 千 葉 音羽山 清水寺(清水観音)
- 第33番 千 葉 補陀洛山 那古寺(那古観音)